ただのボカロ好きが「合成音声ONGAKUの世界」をのぞいてみた #vocanote
あなたはVOCALOID――ボカロと聴いてどんな音楽を思い浮かべますか?
早口で甲高い声の曲、VOCALOIDというキャラクターを前面に押し出した曲、歌詞が聞き取れない etc.
もちろんそれ以外の好意的なイメージをもっている人もいると思います。私自身ボカロに出会ってからというもの音楽といえばボカロ、ボカロ=合成音声の音楽を主に聴くようになっていました。
※初めてのボカロとの出会いは、こちらの記事に書いてあります。
ボカロのキャラクターよりも、その音楽や声に惹かれた私にとって嬉しいCDが先日発売されました。
「合成音声ONGAKUの世界」というアルバムです。
- アーティスト: V.A.
- 出版社/メーカー: Pヴァイン・レコード
- 発売日: 2018/03/14
- メディア: CD
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3月14日に発売されたこのアルバムのキャッチフレーズは“ボカロへの偏見が消えるCD”でした。音楽が好きでボカロに偏見を持っていて、敬遠している人に向けたCDといっていいかもしれません。
監修はしまさんとスッパマイクロチョップさん。選曲者はスッパマイクロチョップさんです。
しまさんは、『「ボーカロイド音楽」のいま 2016年のボーカロイド音楽シーンを振り返る』や「ボーカロイド音楽の世界2017」の監修・編集・執筆をしている方です。また、レーベル「Stripeless」を運営されています。
スッパマイクロチョップさんは、2017年8月31日に合成音声(ボカロ)の作品に出会い、ボカロの偏見が消えるDJMIX複数を発表したり、自らUTAUを使いオリジナル曲を発表したりしている方です。また「でたらめ音楽教室」や「踊った方がいいよ」などのイベントを主催されています。
「合成音声ONGAKUの世界」を手に取るとき、ボカロの音楽作品は曲数も多く、バラエティも豊かであるけれども、その中でいったいどんな音楽が選ばれたのかと、ワクワクしていました。
今からボカロに慣れ親しんだ私からみた「合成音声ONGAKUの世界」についてと、初めてボカロに触れる人に向けての解説、この二点を抑えて「合成音声ONGAKUの世界」をのぞいていきます。
それではしばらくお付き合いください。
#1 春野 / “nuit”
一曲目は春野さんによるエレクトロニカ曲。ピアノと初音ミクのやや掠れた声に惹きこまれます。音数は少ないですが、一音一音に美しさを感じます。静かな夜に聴き入りたいですね。
この曲が気に入った方は、春野さんの作品を巡ることをオススメします。また、sea-noさんの想い秘密もチェックすることもオススメします。
#2 Treow / “Blindness”
二曲目は印象的なピアノから始まる変拍子曲です。スッパマイクロチョップさんはこの曲を私の再現DJMIXで知ったそうです。万華鏡のようにくるくると拍子が変わる神秘的な曲に、何度聞いても聴き入ります。
一曲目は夜の雰囲気でしたが、こちらは早朝の静けさが似合う一曲ですね。
この作品が気に入った人は、こちら西島尊大さんの86,400を聴くことをオススメします。
#3 piptotap / “春 etc.”
春の訪れを感じるエレクトロニカ。高めの初音ミクのコーラスも面白く感じるユニークな一曲。このCDで初めてこの作品を知りましたが、5分間があっという間に感じるほど、聴きごたえがありました。
この曲が気に入った方は、ちゃぁさんのメコノプシス・ベトニキフォリアを聴くことをオススメします。
#4 羽生まゐご / “阿吽のビーツ”
v flowerによる和風曲。この曲を初めて聴いた人は、歌声の生っぽさに驚くのではないでしょうか。v flowerは少年のような声をもつROCKに特化したVOCALOIDです。力強くて聞き取りやすい歌声を持っています。
v flowerの歌声が気に入った方には、電ポルPさんの曖昧劣情Loverを聴くことをオススメします。
#5 拓巳 / “Kaleidoscope”
聴き入るROCK曲。ボーカルはめぐっぽいどことGUMIです。この曲はCDで初めて知りました。サビの「望むのなら この場所は天国にも地獄にもなる」が印象的です。耳にすっと入ってくるメロディーとギターの音が心地いいです。
ボーカルのGUMIはROCKで映えるVOCALOIDなのですが、落ち着いた聴き入るROCKにより映える気がします。
GUMIの声が気に入った方は、ぽみさんのひとときを聴くことをオススメします。
#6 cat nap / “ペシュテ”
人間のコーラスと初音ミクが織りなす音に聴き入る一曲。この作品は初音ミクの声だけでなく、作者のコーラスも使われています。
この作品が気に入った方は、cat napさんの黄昏空中遊泳もチェックしてみて下さい。
#7 鈴鳴家 / “フリーはフリーダム”
初音ミクによる自由を叫ぶHIP HOP作品。ビートとラップが癖になる曲です。VOCALOIDによるHIP HOP作品をミックホップと呼びます。現在ニコニコ動画には、ミックホップ作品が430件あります。
歌詞が聴き取りにくいと感じた方は、歌詞を見ながら聴くといいかもしれません。でも、何も見ないで音を感じるのもきっと楽しいでしょう。
この曲が気に入った人は、鈴鳴家さんのはぅとぅABC も聴いてみることオススメします。
#8 松傘、mayrock、sagishi、緊急ゆるポート、trampdog / “人間たち”
こちらもミックホップ作品です。不思議な声の正体は、初音ミクの英語音源による独特なラップです。少し甘い声は重音テト(UTAU)、声に息が含まれているのはさとうささら(CeVIO)。
独特なラップが気に入った方は、初音ミクの証言をさとうささらのラップが気に入った人は、sagishiさんの夜明けに『生きる』をチェックしてみて下さい。
#9 でんの子P / “World is NOT beautiful”
でんの子Pさんは知っていたのに、この曲は知らなかった! 「ハンマー」「ビリヤード」「のこぎり」「一斗缶」「扉」「炭酸水」「プリンター」「自転車のベル」「マッチ」「ドライヤー」「カメラ」「シャワー」「賽銭箱」…などものの名前をギャラ子talkが読み上げるのと同時に、その音が鳴り響きます。身近な音が次々と鳴っているだけなのに、聴いていてい気持ちいい音楽になっています。
途中で少し不穏になるのがでんの子Pさんらしい展開です。
“酷いグリッチ コードの不一致 掠れたノイズの獣道 それでいい そのままでいい”と蒼姫ラピスが歌い上げます。
音を楽しんでいる感じがしたので、このCDで出会えた作品で一番のお気に入りです。
#10 のうん / “箒星”
電子音と美しい高音のピアノと彩音ゆめ(UTAU)の声。宇宙にゆらゆら漂っている心地よさがあります。彩音ゆめの優しくて柔らかい声にぴったり合う一曲です。
この曲が気に入った方は、とるらさんのSpaceもぜひチェックしてみて下さい。
#11 ぐらんびあ / “孤独、すべて欲しい”
こちらも心地いい一曲です。“箒星”が宇宙を漂う曲なら、こちらは青い空を漂う感じがします。この作品のボーカルは、初音ミクdarkです。繊細で落ち着いていて聴きやすいのではないでしょうか。
この作品はCDで初めて知ったのですが、聴いていてい惹きこまれ、あっという間に曲が終わっていました。
この曲が気に入った方は、ぐらんびあさんの世界が透き通ってゆくも聴いてみて下さい。
#12 キャプテンミライ / “イリュージョン”
幼くて元気のあるこの声は、鏡音リンです。ユニークなメロディーが印象的です。この作品はキャプテンミライさんの幻想論シリーズの最終回なので、気に入った方は作品巡りをすることをオススメします。
#13 Dixie Flatline / “シュガーバイン”
落ち着いた声の巡音ルカによるお洒落なR&B曲。巡音ルカV4Xのデモソングでもまります。ボカロにも数はまだ少ないですがR&B曲(866件)があるんです。この曲が気に入った人はぜひDixie Flatlineさんの他の作品もチェックしてみて下さい。また、ボカロのR&Bがもっと聴きたいと思った方はVOCAR&Bでタグ検索してみて下さい。
ちなみに巡音ルカでオススメのR&Bは小川大輝さんのsolitudeです。 #14 yeahyoutoo / “lean on you”
凛とした歌声は猫村いろはです。猫村いろはといえば、ビブラードやこぶしのきいた力強い歌声のイメージがあったのですが、そういったものがなくても十分聴かせる歌声であることに改めて気づかされました。
音数が少なくても歌声とトラックがぴったりと合っていて聴き入る一曲です。
#15 Noko / “只今”
VOICELOID京町セイカによる聴き入る一曲です。VOICELOIDとは入力した文字を読み上げるソフトです。VOCALOIDが入力された歌を歌うのに対し、VOICELOIDは入力された文字を読み上げます。 この曲はこのCDで知ったのですが、夜にじっくり聴き入りたくなるお気に入りの作品になりました。
この作品が気に入った方は、青屋夏生さんの日記を聴くことをオススメします。
「合成音声ONGAKUの世界」は聴き入りたくなる曲が多く収録されていました。何度も聴くことできっと好きになれると思います。歌声も聴きやすいものが多い印象でした。また、初音ミクといったVOCALOIDに限らずUTUやCeVIO、VOICELOIDなど様々な合成音声の作品を選曲して下さったことに好感を持ちました。初音ミクに限らず個性豊かな合成音声たちの歌声が収録されたのは、このCDが初めてなのではないでしょうか。
「合成音声ONGAKUの世界」はボカロを敬遠してるけど、音を楽しむことが好き、聴き入る曲が好きという方にも響くのではないかと思いました。
また、「合成音声ONGAKUの世界」をのぞいてみて、やはり合成音声の音楽の世界は面白いし、まだ出会えていない良い曲があるのだなーと思いました。
初音ミクが発売されて10周年を迎えてからの11年目。こういったCDが発売されたことを本当に嬉しく思います。
このCDでボカロに興味を持った人は、まずは気に入った作者の他の作品を巡って楽しんでほしいですし、ボカロに慣れ親しんでいる人はもし「合成音声ONGAKUの世界」と同じコンセプトでCDを出すならどんな選曲をするのか考えてみてほしいと思いました。
ボカロの音楽、合成音声の音楽が音楽の当たり前になる日がくることを祈っています。