音のまにまに

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生と死を教える二酸化炭素 100回嘔吐 / “吐き出す”  #vocanote

 

生と死と二酸化炭素

 本作『吐き出す』の魅力は生きている“わたし”が吐く“白い息”と逝ってしまった“あなた”の対比です。同じ二酸化炭素であるが、こんなにも違います。


 さて、歌詞中の死の象徴として使われている煙。火葬が一般的な日本では、ピンとくるだろう。では、外国ではどうでしょうか。世界では土葬が一般的です。死と煙を結びつける感覚は、日本独特なのではないでしょうか。

 

 日本の死のイメージを天に昇るだとすれば、世界の死のイメージは地に眠るといえるでしょう。

 

 星になる。永遠の眠りにつく。土に還る。

 

 いずれはやってくる別れを表す言葉は、多くあります。でも、私は本作『吐き出す』を聴いて、「煙になる」が一番儚い表現だと感じました。

 

 生きていることといえば、酸素を吸うイメージが強かったため、二酸化炭素を吐き出すことで生と死を示唆している歌詞に驚きました。

 

 吐息と煙は同じ白い気体であるのに、なぜこんなにも違うのでしょうか。

 

 生きていることと死んでいることを、残酷に優しく教える二酸化炭素

 

 本作は、手が悴むような寒い日に聴くのがいいのかもしれません。ふと吐く息のような温かさが本作にはあるので。それがまた魅力となっています。

 

 余談ですが、本作が投稿されたのは11月下旬です。作者は何度白い息を目にしたことでしょう。その度にいなくなってしまった人に思いをはせたことでしょう。

 

 最後に、作者へ一言捧げます。

 

  ——吐き出してくれてありがとう。

 

※このレビューは、音楽レビューサイト「DAIM」に寄稿したものを再編集したものです。