音のまにまに

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罪の名前の正体は? ryo / “罪の名前”

f:id:tanpopo111:20160611134545j:plain      素敵なイラストは優さん。

ryoさんの初音ミク曲が、3年9か月ぶりにリリースされました。「ODDS&ENDS」以来久々の新曲! 配信限定だったので、早速iTunesで購入しました。

罪の名前

罪の名前

タイトルは「罪の名前」

曲名を見ただけで、どんな曲なんだろう?と気になってしまいますね。

罪の名前とは。誰の罪なのか。

登場人物を確認しながら、歌詞を見ていきます。

運命の女神様が目をとめた

一人目は、運命の女神様。

「なんて可愛い赤ん坊だこと。

そうだわ!あの子に魔法をかけて遊びましょう」

ある赤ん坊、おそらく女の子にある魔法をかけます。
性格は、あまりよろしくないようです。

くぼんた両目 痩せぎすな体

私を見れば誰もが言うのです

「化け物!

お前は同じ人間じゃないんだよ」と

と続くので、私=運命の女神に魔法をかけられた赤ん坊でしょう。

二人目の登場人物は、私です。
彼女は醜い姿のため、人間扱いされません。

もしも願いが一つ叶うなら

世界でたった一人だけの友達を

生きることは素晴らしいこと

そんな風に私も思ってみたい

せめて一人でも友達がほしい。
生きることは素晴らしいことだと思いたい、と日々彼女は願うのでした。

2番では、新たな登場人物が出てきます。
三人目は、盲目の少年=僕です。

彼は、理不尽な差別を許さず、彼女を守ります。
彼女は、当然彼に惹かれ始め、ある願いを抱くようになります。

もしもなりたいものになれるなら

あなたの前では普通の女の子に

普通の女の子になりたい。

盲目な彼は、彼女を慰めたいと思い、白いユリの花を置きます。

その様子を見ていた意地悪な運命の女神は、悪戯をしてしまいます。
盲目な彼の目を治し、白いユリを黒く染め上げてしまったのです。

それを見た彼女は、当然のようにショックを受け、恋をしてしまったことを後悔し、いっそ死んでしまうことができればいいのに、と思います。

そんな彼女に目が見えるようになった彼は、こう叫びます。

「泣かないで、僕がずっと

死ぬまで側にいる。だからさ、

今日から君は普通の女の子さ」


どうやら女神の悪戯は失敗に終わったようです。

……それに見なよ? 悪夢のような魔法はほら 解けたみたい

こうして意地悪な女神と私と僕のお話は、幕を閉じます。

  • 罪を犯したのは誰?

まず、罪の意味を確認しましょう。

正しくない行いをした結果として、問題にされるもの。

本作で問題を起こしているのは、女神でしょう。

女神は二つの悪戯をしました。
一つ目に、赤ん坊に姿が醜くなる魔法をかけました。
そのせいで、女の子は「怪物」のレッテルを貼られてしまいます。

二つ目に、盲目の男の子との仲を壊すために、目を治しました。
こちらは思惑が外れたので、カウントされないかもしれませんが。

女神は女の子に魔法をかけて遊びました。
当然、彼女は被害者です。
しかし、彼女自身は自分が罪を犯してしまったと思っていました。

ああ これはきっと罰です だって 私が身の程知らずに恋をしたから

罰の意味を確認しましょう。

悪い行いに対するこらしめ。

さて、彼女は悪いことをしたのでしょうか?

していませんね。

もしもなりたいものになれるなら あなたの前では普通の女の子に

普通の女の子になりたいと、盲目の彼が好きだと思ったこと。
そういう想いに罪の意識を感じてしまう彼女は、何も悪くありません。

  • この歌詞の中における罪とは?

「女神がかけた魔法」ではありません。
なぜなら、彼女を縛り付けていたのは、悪いレッテルだったためです。
たとえ容姿が醜くても、少年のように「普通の女の子」として認めてくれる人がいれば、彼女は苦しむことはなかったはずです。


つまり、罪の名前の正体とは、理不尽な差別≒ささやかな願いを抱くことも許さない空気です。

物語の締めくくりをみると

……それに見なよ?
悪夢のような魔法はほら
解けたみたい

魔法は解けたとあります。 これは、目が見えるようになった少年が彼女を見て感じたことだと思います。
つまり、「普通の女の子になりたいって思ってもいいんだ」「私は人を好きになってもいいんだ」と生まれて初めて思えた、彼女の笑顔を見ることができたのではないでしょうか。

また、彼女を苦しめていた悪い空気が澄んだ瞬間に、女神が染め上げた黒いユリの花が、もとの真っ白いユリに戻っていたことも、彼は確認できたのかなーなんて思います。

  • 終わりに

ryoさんの久々の新曲は、前作「ODDS&ENDS」や前々作「積乱雲グラフィティ」のように、ミクライブのアンセム曲にはなりえないかもしれません。

でも、初音ミクを知らない方でも共感できる一曲だと私は思います。

さて、「罪の名前の正体は?」と題しまして、歌詞を見ていきました。
歌詞だけではなく、ゲームのPVも素敵なのでぜひご覧ください。


【初音ミク】「Project DIVA X」から「罪の名前」「独りんぼエンヴィー」「卑怯戦隊うろたんだー」をご紹介!【Project DIVA X】

この記事を書いていたら、なんと!ryoさんがニコニコ動画に「罪の名前」を投稿していらっしゃいました!!!

YouTubeでも投稿されています


【初音ミク】 罪の名前

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

※以下は個人的なryoさんやこの曲へ想いを綴った長文です。
お暇な方だけ、読んでみてください。

私は、ryoさんの「メルト」でボカロを知りました。
もう6年ほど経ったでしょうか。
ryoさんの曲は、今でも好きでボカロも同じように好きでいることができています。
また、ずっと好きでいられるもののきっかけがryoさんの曲でよかった、とも思っています。

最初に出会ったボカロ――初音ミクは、私にとっては普通の女の子でした。
科学の限界を超えてやってきたバーチャルアイドルでもなく、マスターの曲を歌ってくれる子でもなく、恋する女の子でした。

VOCALOIDのことを何も知らずに聞いたことと、初めての音がメルトだったこと。
この二つが、初音ミクのよい第一印象を形作ったのかな、と今は思います。

ryoさんの初音ミクは、普通の女の子でした。
デビューアルバム「supercell」もほぼ全曲恋の歌ですし、ニコニコ動画に投稿した作品も恋する女の子の歌が多いです。

でも、前作の「ODDS&ENDS」は、明らかに違います。
この曲は、ryoさんがryoさんと初音ミクについて書いた曲だと思っています。


ryo(supercell) feat.初音ミク 『ODDS&ENDS』

この曲が発表されたとき、もうryoさんは初音ミクで曲を書かないのではないか、と思っていました。
なので、「罪の名前」を発表してましてやニコニコ動画に帰ってくるなんて、予想していませんでした。

帰ってきてくれて、嬉しい。そう思いました。

でも、なんとなくこう思いました。

もう今度こそ初音ミクで曲を書かないだろうな、と。

「罪の名前」では、女の子が普通の女の子になりたいと願っています。

ryoさんのミクさんは、ずっと普通の女の子になりたかったのかもしれません。
ryoさん自身も、普通の女の子について書きたかったのかもしれません。

私の予感が外れて、ryoさんが初音ミク(過去にデモで使った鏡音リン)で曲を書いてくれたら。
今日のように喜ぶかもしれません。

今日は某SNSで珍しくもあらぶっておりました笑

最後に。
今のボカロは、ryoさんがいたころに比べて盛り上がりに欠けるかもしれません。 でも、今のボカロは楽しいです。面白いです。

ryoさんが好きな人、好きだった人にも今のボカロを覗いてみてほしいです。

こんなに長い文章を書いたのは久々です。

ひとまず、この辺りで筆をおくことにします。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

2016/06/11 一部修正しました。